「空室が続いているが、家賃は下げたくない」「ペット可にすれば決まりやすいと聞くが、本当に効果があるのか分からない」と迷っているオーナーの方は多いのではないでしょうか。
結論として、ペット可への切り替えは、周辺にペット可の物件が少なく、需要が確認でき、騒音・におい・原状回復を管理できる物件であれば、有効な空室対策の選択肢になります。一方で、需要が確認できないエリアや、音が響きやすい建物、既存の入居者とのトラブルが心配な物件では、効果よりも負担が大きくなることがあります。
この記事では、収益物件をペット可にするメリットとデメリット、向いている物件と向かない物件、切り替える前に決めておきたいルール・契約・費用の考え方を、賃貸管理の実務の視点から解説します。
結論|ペット可が空室対策になるかは「需要・建物・管理」で決まる
ペット可にするかどうかは、「需要があるか」「建物が向いているか」「管理できるか」の3つで判断します。ペット可という条件そのものに効果があるのではなく、3つがそろったときに、競合物件との差別化として機能するためです。
| 判断の軸 | 検討しやすい状態 | 慎重に判断したい状態 |
|---|---|---|
| 需要 | 周辺でペット可の募集が少なく、ペット可を探す問い合わせがある | 周辺にペット可の物件が多い、または問い合わせが確認できない |
| 建物 | 上下階・隣室への音が伝わりにくい。共用部で入居者がすれ違う機会が少ない | 音が響きやすい。廊下や階段が狭く、共用部での接触が多い |
| 管理 | 飼育ルールの説明、入居中の苦情対応、退去時の確認を管理会社が対応できる | 管理体制が弱く、トラブルが起きたときの対応が決まっていない |
空室の原因が家賃の高さや建物の状態にある場合は、ペット可にしても解決しないことがあります。ペット可を検討する前に、まず空室の原因を整理しておくことが大切です。原因の見方は、地方物件の空室はなぜ起きる?管理会社が見ている原因と対策で解説しています。
収益物件をペット可にするメリット
ペット可にする主なメリットは、競合物件との差別化と、入居が決まった後の安定です。ペットを飼っている人は選べる物件が限られるため、条件が合う物件が見つかると、その物件を選ぶ理由がはっきりします。
周辺の競合物件と差別化できる
築年数・家賃・間取りが似た物件が並ぶエリアでは、入居者は少しでも条件の良い物件から選んでいきます。周辺にペット可の物件が少なければ、ペットを飼っている人にとっては、それだけで検討の候補に入る理由になります。築年数が古い物件でも、設備や新しさとは別の軸で選ばれる可能性があります。
入居期間が長くなりやすい傾向がある
ペットと暮らせる物件は探す手間がかかるため、一度入居すると住み続ける人が多い傾向があるといわれます。退去が減れば、空室期間や募集にかかる費用、原状回復の回数も減ります。ただし、入居期間は入居者の事情によって大きく変わるため、長期入居を前提に収支を組むことは避けたほうが安全です。
募集条件を見直せる余地がある
ペット可の物件では、敷金を多めに設定したり、家賃に上乗せしたりするケースもあります。ただし、どこまで条件を見直せるかは、エリアの需要と周辺のペット可物件の条件によって異なります。家賃を上げられることを前提にせず、周辺のペット可物件の募集条件と比べて決めます。
ペット可にするデメリットとリスク
ペット可にする主なリスクは、原状回復費用の増加、入居者同士のトラブル、既存の入居者への影響の3つです。いずれも、切り替える前にルールと契約を整えておくことで、ある程度は抑えられます。
原状回復費用が増える可能性がある
ペットの爪による床や壁紙のキズ、においの付着によって、退去時の原状回復の範囲が広がることがあります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、ペットによる柱やクロスなどのキズ・においは、借主の負担と判断される場合が多いと整理されています。
ただし、借主の負担になるとしても、敷金で足りない分を退去後に回収できるとは限りません。また、においが壁紙の下地まで染み込んでいる場合は、表面の張り替えだけでは消えないことがあります。管理の現場では、入居時に室内の写真を残し、退去時の立会いでキズとにおいの状態を確認しておくことが、費用の負担を話し合う前提になります。

鳴き声・におい・共用部でのトラブル
犬の鳴き声、においの漏れ、共用部での排せつやリードなしの移動などは、ほかの入居者からの苦情につながりやすい点です。苦情が続くと、ペットを飼っていない入居者の退去につながることもあります。ペット可は空室対策のはずが、別の空室の原因になる可能性がある点は、事前に知っておきたいところです。
ペット不可を前提に入居している人への影響
今の入居者は、「ペットのいない建物」として部屋を選んでいる場合があります。動物アレルギーのある入居者がいる可能性もあります。途中からペット可に切り替える場合は、既存の入居者への説明と、どの部屋を対象にするかの検討が欠かせません。
ペット可に向いている物件・向かない物件
ペット可への切り替えは、どの物件にも向いているわけではありません。建物の構造、部屋の配置、入居者の状況を見て、物件ごとに判断します。

検討しやすい物件
- 周辺でペット可の募集が少ない:競合との差別化につながりやすい
- ペット可を探す問い合わせが確認できる:地元の管理会社や仲介会社に、問い合わせの有無を聞いておく
- 音や接触のトラブルを抑えやすい間取り・配置:戸建て賃貸、メゾネット、1階の部屋、専用の出入口がある部屋など
- 床や壁の対策が現実的な範囲でできる:改修の費用を、空室期間の短縮や条件の見直しで回収できる見込みがある
- 管理会社が運用に対応できる:飼育ルールの説明、苦情への対応、退去時の確認を任せられる
慎重に判断したい物件
- 音が響きやすい建物:上下階や隣室に音が伝わりやすい物件は、鳴き声や足音が苦情の原因になりやすい
- 共用部の動線が狭い物件:廊下や階段で入居者とすれ違う機会が多く、接触によるトラブルが起きやすい
- ペット不可を前提に入居している人が多い物件:既存の入居者との調整が難しく、退去につながるおそれがある
- 分譲マンションの一室(区分所有):ペットの飼育は管理規約で決められていることが多く、オーナーだけでは決められない
こうした条件に当てはまる場合は、ペット可以外の空室対策(募集条件の見直し、設備の更新、管理会社の募集方法の見直しなど)もあわせて検討します。
ペット可に切り替える前に決めておくこと
ペット可に切り替える前に決めておきたいのは、「需要の確認」「対象とルール」「契約」「費用の回収」の4つです。募集を始めてからルールを決めると、入居者ごとに条件がばらつき、トラブルのときに対応しにくくなるためです。
- 需要を確認する:不動産ポータルサイトで、同じエリア・同じ条件のペット可物件が何件募集されているかを調べ、管理会社にペット可を探す問い合わせの状況を聞く
- 対象とルールを決める:全戸か一部の部屋か、飼育できる動物の種類・大きさ・頭数、共用部での決まりを決める
- 契約書と特約を整える:ペット飼育の条件、禁止事項、退去時の原状回復の範囲を、契約書や飼育細則に明記する
- 内装の対策と費用を見積もる:床材や壁の下部の保護など、必要な範囲の改修を見積もる
- 募集条件と募集文面を決める:敷金・家賃などの条件と、飼育できる条件を募集情報に分かりやすく載せる
「ペット可」と「ペット相談可」の違いを決めておく
募集の表記には、条件を満たせば飼育できる「ペット可」と、入居希望者ごとに飼育を認めるか判断する「ペット相談可」があります。相談可にすると、動物の種類や大きさを個別に判断できる一方で、どこまで認めるかの基準がないと、入居者ごとに対応がばらつきます。どちらで募集する場合も、判断の基準は事前に決めておきます。
原状回復の特約は、内容を明確にして説明する
退去時のクリーニングや消臭の費用を借主の負担とする特約を入れる場合は、内容と金額の考え方を明確にし、契約のときに説明しておきます。国土交通省のガイドラインでは、通常の原状回復を超える負担を借主に求める特約について、必要性と合理的な理由があること、借主がその負担を認識し、負担する意思を示していることを、有効と認められるための要件として示しています。特約の文言は、管理会社と相談して決めることをおすすめします。
改修費は、回収できるかどうかで判断する
ペット可にするために大規模なリノベーションをする必要はありません。床材を傷やにおいに強いものにする、壁の下部を保護するなど、必要な範囲の対策で検討します。

判断の目安は、改修にかかる費用を、空室期間が短くなることによる家賃収入の増加と、条件見直しによる増収で回収できるかどうかです。改修費の見積もりは、床材・壁材・施工範囲・部屋の広さによって大きく変わるため、管理会社やリフォーム会社から見積もりを取ってから試算します。管理会社に管理を任せている場合は、施工内容を共有し、退去時の確認の基準にしてもらうことも大切です。
地方・北関東の物件でペット可を検討するときの視点
地方の物件では、ペット可にするかどうかを、建物の形と周辺の競合の状況から判断することが大切です。地方では、都市部とは異なる住まい方が前提になるためです。
北関東(栃木・群馬・茨城)のような車社会の地域では、戸建て賃貸や、敷地に余裕のあるアパートが多く見られます。戸建て賃貸や1階の部屋は、上下階への音の影響が小さく、ペット可と相性の良い形といえます。一方で、エリアによってはすでにペット可の物件が多く、差別化にならないこともあります。地域で一律に判断せず、物件の周辺で同じ条件のペット可物件が何件募集されているかを、実際に調べて確認してください。
また、地方では管理会社の選択肢が限られることがあります。ペット可の物件は、入居中の苦情への対応や退去時の確認など、管理の手間が増えます。今の管理会社が対応できるかを、切り替える前に相談しておきます。管理会社との相談の進め方は、収益物件の管理会社との付き合い方は?オーナーが実践したい相談・判断・確認のポイントで解説しています。
よくある質問
Q. ペット可にすると、原状回復費用は必ず高くなりますか?
A. 必ず高くなるわけではありませんが、増える可能性はあります。費用は、動物の種類や飼育の状況、内装の対策によって変わります。入居時の写真の記録、契約での負担範囲の明記、傷やにおいに強い内装材の採用によって、費用の増加とトラブルを抑えやすくなります。
Q. 入居者がいる物件でも、途中からペット可にできますか?
A. 可能ですが、既存の入居者への説明と配慮が必要です。既存の入居者は、ペットのいない建物として部屋を選んでいる場合があります。まずは空いている部屋や1階の部屋など対象を絞り、管理会社と相談しながら進めることをおすすめします。
Q. ペット可にすれば、家賃を上げられますか?
A. 上げられるかどうかは、エリアの需要と周辺のペット可物件の条件によって異なります。周辺にペット可の物件が少なく、問い合わせが多いエリアでは条件を見直せることもありますが、上げられることを前提にした収支計画は避けたほうが安全です。周辺のペット可物件の募集条件と比べて決めます。
Q. 区分マンションの一室でも、オーナーの判断でペット可にできますか?
A. オーナーだけでは決められないことが多いです。分譲マンションでは、ペットの飼育は管理規約や使用細則で決められているのが一般的です。ペット可を検討する前に、管理規約で飼育が認められているか、どんな条件があるかを確認してください。
Q. ペット可にしてから、どのくらいで効果が出ますか?
A. 効果が出るまでの期間は、エリアの需要や周辺のペット可物件の状況によって異なり、一概にはいえません。募集を始めてからの問い合わせや内見の数を管理会社と確認し、反応が少なければ条件や募集の方法を見直します。
まとめ|ペット可は、条件がそろったときに効く空室対策
収益物件のペット可への切り替えは、需要があり、建物が向いていて、管理できる物件であれば、家賃を下げずに空室を埋める選択肢の一つになります。反対に、需要が確認できない、音が響きやすい、既存の入居者との調整が難しいといった物件では、慎重に判断する必要があります。
空室が続いている場合は、まず空室の原因を整理し、そのうえで周辺のペット可物件の募集状況を調べ、管理会社にペット可の需要と運用の対応を相談してみてください。ルール・契約・改修費を決めてから募集を始めることで、トラブルと費用の増加を抑えやすくなります。
この記事は、賃貸仲介・管理・収益不動産の売買仲介など、不動産会社での実務経験をもとに執筆しています。


