不動産管理会社とオーナーの違いとは?役割・責任・権限を一覧で整理

不動産管理会社とオーナーの役割・責任・権限の違いを紹介する画像。アパートを背景に、双方の資料と管理委託契約書を配置。

収益物件を持つと、「どこまでを管理会社に任せて、どこからを自分で決めるのか」で迷う場面が出てきます。この記事では、収益物件のオーナー(これから持つ人を含む)の立場から整理します。

結論として、不動産管理会社とオーナーの違いは「誰が決めて、誰が動くか」にあります。オーナーは物件の所有者であり、入居者と賃貸借契約を結ぶ貸主として、賃貸経営の方針を決めます。管理会社は、オーナーと結んだ管理委託契約にもとづき、委託された業務を担います。どちらか一方だけが責任を負うのではなく、オーナーには所有者・貸主としての責任が、管理会社には受託した業務を適切に行う責任があります。

この記事では、両者の違いを一覧で整理したうえで、入居者募集や修繕、退去などの場面ごとの役割分担と、管理会社に判断を任せられる範囲を解説します。管理の現場で「誰が決めるのか」があいまいになりやすい場面と、契約で確認したい項目も紹介します。

目次

不動産管理会社とオーナーの違いは「誰が決めて、誰が動くか」

不動産管理会社とオーナーの違いは、オーナーが賃貸経営の方針を決め、管理会社がその方針と契約にもとづいて業務を担う点にあります。責任も、それぞれの立場と契約に応じて双方にあります。両者は上下関係というより、決める役割と動く役割を分担する関係です。

項目オーナー管理会社
立場物件の所有者。入居者との賃貸借契約の貸主オーナーから管理業務を受託する事業者
入居者との関係賃貸借契約の当事者オーナーに代わって窓口・対応を担う
決めること運用方針、家賃・募集条件、修繕の実施、管理会社の選定など契約や取り決めで任された範囲の判断
担うこと判断に必要な報告を確認し、決めた内容を伝える募集、集金、入居者対応、点検、修繕の手配と報告
責任所有者・貸主としての責任と、賃貸経営の結果受託した業務を契約どおり適切に行う責任
お金の流れ家賃収入を得て、管理手数料や修繕費などを負担する管理手数料などの報酬を受け取る

管理手数料は家賃の3〜5%程度が一つの目安とされますが、会社・地域・契約内容(どこまで任せるか)によって異なります。手数料の水準や含まれる業務の確認方法は、不動産管理会社とは?仕事内容・手数料・契約で確認したいことを収益物件オーナー向けに解説で詳しく整理しています。

オーナーは所有者・貸主としての責任を持つ

管理会社に管理を任せる「管理委託方式」では、入居者と賃貸借契約を結んでいる貸主はオーナーです。管理会社が窓口になっていても、契約上の貸主が入れ替わるわけではありません。

そのため、貸主として必要な修繕を行う義務(民法第606条)や、建物の設置や保存に問題があって他人に損害が出た場合に所有者として責任を問われる可能性(民法第717条)は、管理を委託してもなくなりません。業務を任せることと、所有者・貸主としての立場まで移ることは別だと考えておきましょう。

管理会社は受託した業務について責任を持つ

管理会社が担う業務と、その業務についての責任の範囲は、オーナーと結ぶ管理委託契約(法律上は「管理受託契約」)で決まります。契約で引き受けた業務を適切に行わなかった場合は、管理会社が契約にもとづく責任を問われる可能性があります。

賃貸住宅管理業法は、オーナーから委託を受けて行う「管理業務」を、次の2つと定めています。

  • 賃貸住宅の維持保全(点検・清掃などの維持と、必要な修繕)を行う業務
  • 家賃・敷金・共益費などの金銭の管理を行う業務(維持保全とあわせて行うものに限る)

つまり、維持保全だけを行う場合と、維持保全と金銭の管理をあわせて行う場合が対象で、家賃の集金などの金銭の管理だけを行う場合は対象外です。この管理業務を行う事業者のうち、管理戸数が200戸以上の事業者は国土交通大臣への登録が必要で、200戸未満の事業者は任意で登録できます。登録業者には、契約前の重要事項の説明(書面または電磁的方法)や、委託者であるオーナーへの定期報告などが義務付けられています。

登録がないことだけで、その会社が不適切だと判断することはできません。登録の有無とあわせて、契約前に業務の内容と責任の範囲がどのように説明されるかを確認するのが現実的です。制度の詳細は、国土交通省や法令の最新の情報で確認してください。

サブリース(一括借上げ)は構図が変わる

サブリースは、サブリース業者がオーナーから物件を借り上げ、入居者に転貸(また貸し)する仕組みです。入居者と契約する貸主はサブリース業者になるため、オーナーが直接決められる範囲は、管理委託方式とは変わります。この記事では、主に管理委託方式を前提に説明します。

場面別に見る役割分担|誰が決めて、誰が動くか

場面ごとに見ると、オーナーは「お金と方針に関わる判断」を、管理会社は「調べて、手配して、報告する」業務を担うのが基本の形です。ただし、分担は管理委託契約によって変わるため、次の表は一般的な形として見てください。

場面オーナーが決めること管理会社が担うこと
入居者募集家賃・敷金などの募集条件、広告費をかけるか募集活動、仲介会社への情報提供、内見の調整、反響の報告
入居審査入居を認めるかの最終判断、または任せる場合の基準申込内容の確認、保証会社の審査の手配、結果の報告
家賃の集金・滞納滞納が続いたときの方針(法的手続きに進むかなど)入金の確認、督促、オーナーへの送金と報告
設備故障・小修繕修繕の実施と費用負担、修理か交換か入居者からの受付、業者の手配、見積もりの取得、完了報告
定期点検・清掃点検・清掃の頻度と予算巡回、清掃、点検結果の報告
退去・原状回復原状回復工事やリフォームの内容退去立会い、費用負担の整理、敷金の精算、工事の手配
大規模修繕実施するか、時期、予算劣化状況の報告、見積もりの取得、工事の調整
管理会社の変更・売却管理会社を替えるか、売却するか契約に沿った引き継ぎ、資料の整理

管理会社に判断を任せられる範囲もある

管理会社に任せられるのは、作業だけではありません。契約や取り決めによって、一定額までの修繕の手配、決めた基準にもとづく入居審査、決めた幅の中での募集条件の調整など、判断の一部を管理会社に委ねることもできます。

その場合も、どこまでを任せるかという基準を決めるのはオーナーで、決めた基準の中で判断するのが管理会社です。任せる範囲を広げるほど対応は早くなりますが、オーナーが状況を把握しにくくなる面もあります。報告の受け方とあわせて決めておくと、任せた判断の中身を後から確認できます。修繕費をどう見込むかは、収益物件の修繕費、どう向き合う?先送りしないための考え方で解説しています。

同じ修繕案件について、取り決めに沿って進める場合と、個別承認を受ける場合を左右に比較する。

滞納の督促と法的手続きは分けて考える

家賃の督促は管理会社が担うのが一般的ですが、明け渡しを求める訴訟などの法的手続きは、貸主であるオーナー本人が行うか、代理人に依頼して行います。報酬を得て訴訟の代理などの法律事務を業として行えるのは、法律に別段の定めがある場合を除き弁護士(弁護士法人を含む)に限られます(弁護士法第72条)。

簡易裁判所で扱う、訴訟の目的の価額が140万円以下の事件などは、法務大臣の認定を受けた司法書士も代理できます(司法書士法第3条)。ただし、不動産に関する訴訟は地方裁判所で扱われることもあり、どの専門家に依頼できるかは事件の内容や金額によって変わります。滞納が長引いた場合に管理会社がどこまで対応するかを契約前に確認し、法的手続きが必要になったら早めに専門家へ相談しましょう。家賃保証会社を利用している場合は、保証会社の対応範囲もあわせて確認します。

原状回復は、費用負担の整理とリフォームの判断を分ける

退去時の原状回復では、通常の使用による損耗や経年変化は、入居者の原状回復義務に含まれません(民法第621条)。入居者の故意・過失などによる損傷は入居者の負担になりますが、その場合も、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど入居者の負担割合を減らす考え方が示されています。入居者の負担になる損傷でも、新品に交換する費用の全額を求められるとは限りません。

賃貸借契約に特約がある場合は、その内容も関係します。ガイドラインでは、通常の原状回復を超える負担を入居者に求める特約が有効とされるには、必要性と合理的な理由があること、入居者がその負担を認識し、負担する意思を示していることなどが必要とされています。管理会社はこうした考え方と契約に沿って費用負担を整理しますが、次の募集に向けてどこまでリフォームするか、設備を更新するかを決めるのはオーナーです。退去時の流れは、入退去対応で管理会社が見ているポイントとは?オーナーが知っておきたい流れと確認事項で詳しく解説しています。

管理の現場で「誰が決めるか」があいまいになりやすい3つの場面

管理会社とオーナーの行き違いは、どちらかの悪意よりも、決める人の取り決めがあいまいなことから起こりやすいものです。管理の現場で境界があいまいになりやすいのは、次の3つの場面です。

急ぎの修繕を、事前承認なしで手配できるか

給湯器の故障や水漏れなど、入居者の生活に関わる不具合はすぐに対応が必要です。そのため、一定額までの修繕はオーナーの事前承認なしで手配できる、と取り決めることがあります。

行き違いが起きるのは、この金額や対象があいまいなときです。オーナーは「相談なしに発注された」と感じ、管理会社は「緊急だったので手配した」と考えます。契約時に、金額の上限、緊急時の扱い、事後報告の方法を決めておくと、行き違いを減らせます。上限額の水準は物件の規模や契約内容によって変わるため、管理会社と相談して決めましょう。

不具合箇所の写真・見積書・契約書を横に並べ、対応前に照合する資料を示す。

募集条件の見直しを、誰が言い出すか

空室が長引いたとき、家賃や募集条件を見直すかどうかを決めるのはオーナーです。一方で、反響の数や内見の様子を知っているのは管理会社です。管理会社が「オーナーが決めることだから」と提案を控え、オーナーが「何も言われないから問題ない」と受け止めると、空室の期間だけが延びていきます。

募集を始めてから一定期間決まらない場合は見直しを提案してもらう、といった約束をしておくと、決める人と言い出す人の役割がはっきりします。空室の原因の見方は、地方物件の空室はなぜ起きる?管理会社が見ている原因と対策が参考になります。

無地の募集報告書と条件変更案を並べ、報告だけで終わらず判断材料まで確認する構図。

建物以外の管理を、誰が手配するか

駐車場の区画の管理や無断駐車への対応、敷地の除草などは、管理委託の範囲に入っているのか、別料金なのか、オーナーが自分で手配するのかが、契約によって分かれやすい項目です。車で移動する人が多い地域の物件や、敷地や駐車場が広い物件では、こうした項目が増える場合があります。担当があいまいなまま放置されると、入居者の不満や空室の原因になることもあるため、契約前に確認しておきましょう。

建物・駐車場・植栽帯を独立した三つの枠に分け、契約範囲を個別に確認する構図。

物件から離れて住むオーナーは、境界を先に決めておく

オーナーが物件から離れて住んでいる場合は、任せる範囲と相談する範囲を、契約の段階で決めておく意味が大きくなります。たとえば首都圏に住みながら栃木・群馬・茨城の物件を持つ場合など、現地に足を運べる機会が限られると、日常の判断の多くを管理会社からの連絡にもとづいて行うことになるためです。

また、エリアによっては、収益物件の管理を受けられる会社が限られる場合もあります。契約後に管理会社を替えることを前提にしにくいときは、契約前に判断の境界を詰めておくことが、運用中の行き違いを減らす現実的な方法です。契約後の相談や報告の確認の進め方は、収益物件の管理会社との付き合い方は?オーナーが実践したい相談・判断・確認のポイントで解説しています。

管理委託契約で「誰が決めるか」を確認する項目

役割分担のズレは、契約前の確認でかなり減らせます。決める人と動く人の境界に関わる項目として、次の点を管理会社に確認しておきましょう。

  • 管理会社の判断で手配できる修繕の上限額と、緊急時の扱い
  • 必ずオーナーに相談してから進める事項
  • 入居審査の最終判断を誰がするか(任せる場合の基準)
  • 管理会社が調整できる募集条件の範囲と、見直しを提案してもらう目安
  • 滞納が続いたときの対応範囲と、法的手続きに進む場合の流れ
  • 駐車場・敷地など、建物以外の管理が業務に含まれるか
  • 任せた判断の結果を、いつ、どのような形で報告してもらうか
  • 管理会社の責任の範囲(契約書と重要事項の説明で示される内容)

管理手数料に含まれる業務、別途費用、契約期間と解約の条件、賃貸住宅管理業の登録の確認など、管理会社そのものを比べるための項目は、不動産管理会社とは?仕事内容・手数料・契約で確認したいことを収益物件オーナー向けに解説の確認表を参考にしてください。

よくある質問

入居者からの連絡は、オーナーと管理会社のどちらが受けますか?

管理委託をしている場合は、管理会社が窓口になるのが一般的です。設備の故障や騒音などの相談は管理会社が受け、費用がかかる対応や方針の判断が必要なものは、管理会社からオーナーに相談が来る流れになります。

管理会社に判断を任せることはできますか?

契約や取り決めで範囲を決めれば、一部の判断を任せることはできます。一定額までの修繕の手配や、決めた基準にもとづく入居審査などが代表的です。任せる範囲と基準を決めるのはオーナーなので、上限額や報告の方法とあわせて文書で残しておくと安心です。

家賃を下げるかどうかは、誰が決めますか?

家賃や募集条件は、貸主であるオーナーが決めるのが基本です。管理会社は、周辺の相場や反響の状況をもとに見直しを提案する役割を担います。決めた幅の中での調整を管理会社に任せる取り決めをしている場合は、その範囲で管理会社が判断することもあります。

管理会社のミスで損害が出た場合、責任は誰にありますか?

管理会社が委託された業務を適切に行わなかった場合は、契約にもとづいて管理会社の責任が問われる可能性があります。ただし、入居者から見た貸主はオーナーのため、まずオーナーが対応を求められる場面もあります。責任の範囲や賠償の扱いは契約内容によるため、管理委託契約書と重要事項の説明の内容を確認しておきましょう。

入居者とのトラブルで、オーナーが直接対応する必要はありますか?

日常の対応は管理会社が窓口になるのが一般的ですが、オーナーが関わる場面もあります。契約の解除や明け渡しを求める手続きなど、貸主としての判断や手続きが必要になる場面です。どの段階でオーナーに判断を求めるかは、管理会社とあらかじめ決めておくと対応が止まりにくくなります。

まとめ

不動産管理会社とオーナーの違いは、「誰が決めて、誰が動くか」です。オーナーは賃貸経営の方針を決め、管理会社は委託された業務を担います。責任は、それぞれの立場と契約に応じて双方にあります。

  • オーナー:物件の所有者で、入居者との賃貸借契約の貸主。家賃・募集条件・修繕・管理会社の選定などを決め、所有者・貸主としての責任を持つ
  • 管理会社:管理委託契約の範囲で、募集・集金・入居者対応・点検・修繕の手配などを担い、受託した業務を適切に行う責任を持つ
  • 判断の一部は管理会社に任せられる。その範囲と基準を決めるのはオーナー

次の一歩として、管理委託契約書(これから契約する場合は契約書の案)を手元に用意し、この記事の確認項目と照らし合わせてみてください。「管理会社が判断してよい範囲」と「オーナーに相談する範囲」があいまいな項目が見つかったら、管理会社と取り決めておくことで、運用中の行き違いを減らせます。

この記事は、不動産業界12年目の運営者(宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士)が、賃貸・不動産管理・収益不動産の売買の実務経験をもとに執筆しています。

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この記事を書いた人

ときどのアバター ときど 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人資産相談業務)/相続支援コンサルタント

不動産業界12年目。現在も北関東の不動産会社に勤務し、賃貸管理・収益物件の売買・査定・現地確認などの実務に携わっています。栃木・群馬・茨城の収益物件について、空室・修繕・融資・売却まで、利回りだけでは分からない点を現場目線で解説しています。

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