まず一つのモデル物件を設定します。ここで大切にしているのは、「極端な物件ではなく、現実にありそうなライン」にすることです。なぜなら、初心者の方が実際に迷うのは、明らかに危ない物件ではなく、「これ、悪くなさそうだけどどうなんだろう?」という、判断が難しい物件だからです。
そのため今回は、ポータルサイトを見ていれば普通に出てくる、いわゆる”検討ラインに乗りやすい物件”を想定しています。
■モデル物件の詳細
- エリア:地方都市(人口15万人前後)
- 最寄り駅:徒歩15分
- 価格:1,300万円
- 構造:軽量鉄骨
- 築年数:築28年
- 間取り:2DK × 4戸
- 入居状況:3/4入居(1室空室)
- 満室想定家賃:4.5万円 × 4戸
- 年間満室収入:216万円
- 表面利回り:約16.6%
数字だけを見ると、かなり魅力的に見えます。
まず価格帯ですが、1,300万円という金額は、一棟の収益物件としては、初心者が最初の候補に入れやすい価格帯です。融資を利用して購入を検討するケースも多く、心理的なハードルは比較的低いといえます。
次に利回りです。表面利回り16%台というのは、ポータル上では「高利回り」に分類されます。この数字を見ると、「ちゃんと回りそうだな」と感じる方は多いはずです。
さらに、満室ではないとはいえ、すでに3戸が入居中という点も安心材料に見えます。「完全な空室ではない=需要はある」こういう解釈になりやすいからです。
そして間取りは2DK。少し古さはあるものの、地方ではまだ一定の需要が残っているタイプです。
つまりこの物件は、価格→検討しやすい、利回り→高い、稼働→ある程度埋まっている、という、初心者が安心しやすい要素が揃っています。
■なぜこの物件が”危ないとは気づきにくい”のか
ここが今回の一番重要なポイントです。この物件は、決して「明らかにダメ」ではありません。利回りが極端に低いわけでもない、空室だらけでもない、立地が極端に悪いわけでもない。だからこそ、判断が難しいのです。
初心者の方がつまずくのは、こういう”グレーな物件”です。明確にNGであれば避けられます。しかし、「ちょっと気になるけど、いけるかも…」というレベルの物件は、判断を誤りやすくなります。
そして実際に購入してから、思ったより決まらない、修繕がかかる、家賃が下がる、こうした問題に直面するケースが少なくありません。
■今回の評価の進め方
ここから先は、このモデル物件を使って、判断のチェックポイントを一つずつ当てはめていきます。重要なのは、「なんとなく良さそう」という感覚を一度横に置くことです。
そして、エリア→物件スペック→収支→リスク→最終判断、この順番で、冷静に評価していきます。
まずはエリアの視点から評価を始めます。続きは【エリア編】賃貸需要がある場所かを徹底的に見るでご覧ください。
このプロセスを通すことで、見えてくるものが大きく変わります。実際、現場でも感じるのですが、良い判断をしている人ほど、考え方がシンプルです。特別な分析をしているわけではありません。ただ、「見るポイントが決まっている」だけです。
今回のシリーズでは、そのプロセスをできるだけ具体的に再現します。読んで終わりではなく、「自分でも同じように判断できる」状態になることを目的にしています。
■この物件は”買い”なのか?
結論はまだ出しません。ここではあえて、判断を保留にしておきます。なぜなら、順番に評価すること自体が重要だからです。いきなり結論を出すのではなく、一つずつ確認していく。このプロセスが、最終的な判断の精度を高めます。

