空室が続くときの家賃の見直し方|相場の調べ方と値下げ前の確認点

賃貸アパートと成約事例の比較資料を背景に、空室時の家賃の見直し方と値下げ前の確認点を紹介する画像。

空室が続いていて、「家賃を下げるべきか、もう少し様子を見るべきか」と迷っているオーナーの方も多いのではないでしょうか。

結論として、空室が続くときの家賃は、「この家賃で貸したい」という希望ではなく、周辺で実際に決まった家賃(成約事例)を基準に見直すのが基本です。少し高い家賃の上乗せ分で、入居が遅れた月の家賃を取り戻すには、長い期間がかかることがあります。

ただし、空室の原因が家賃だけとは限りません。この記事では、空室中のオーナーが家賃と募集条件を見直す手順として、相場の調べ方、上乗せと入居の遅れの比べ方、値下げ前の確認点、管理会社への相談の仕方を解説します。

この記事の要点

  • 家賃の見直しは、条件をそろえた成約事例を基準にする
  • 月2,000円の上乗せで入居が2か月遅れると、家賃収入の合計が並ぶのは入居から60か月後(仮定の計算)
  • 値下げの前に、問い合わせ・内見・見送り理由から原因を切り分ける
  • 家賃以外の募集条件も比べ、既存の入居者や収支への影響を確認する
目次

空室が続くときの家賃は「成約事例」を基準に見直す

空室中の家賃を見直すときは、賃貸ポータルサイトの募集家賃ではなく、実際に入居が決まった家賃を基準にします。募集家賃は「その金額で募集している」という事実にすぎず、その金額で決まることを示すものではないためです。

購入時のシミュレーションやローンの返済を考えると、家賃はできるだけ下げたくないものです。ただ、入居者はオーナー側の事情とは関係なく、周辺の物件と比べて部屋を選びます。空室時の家賃は「決めたい金額」ではなく、「入居者が選ぶ金額」から考えることが出発点です。

相場より少し高いと、なぜ選ばれにくくなるのか

理由の一つは、検索の段階で比較の候補から外れることです。賃貸ポータルサイトには家賃の上限で絞り込む条件があり、例えば「6万円以下」で探す人には、6万2,000円の物件は表示されません。

もう一つは、毎月の支払い総額です。家賃を相場に合わせても、駐車場代や共益費を加えた総額で比べると、割高になる場合があります。

一方で、設備が整っている、駐車場に余裕があるなど、上乗せに見合う理由があれば、相場より高くても決まることがあります。自分の物件がどちらに当たるかは、管理会社に問い合わせ数を確認し、条件の近い競合物件と比べて確かめます。

家賃の上乗せと入居の遅れを数字で比べる

家賃の上乗せ分と入居の遅れは、家賃収入の合計で比べられます。ここでは、次の仮定を置いて計算します。

  • 相場は月6万円。6万円で募集した場合は、6万2,000円で募集した場合より2か月早く入居が決まる
  • どちらも入居後は家賃を変えず、同じ比較終了時点まで入居が続く
  • 原状回復費や管理手数料などの経費は含めない(家賃収入だけの比較)

「6万円なら2か月早く決まる」は計算のための仮定で、実際にそうなるとは限りません。この条件では、6万2,000円で入居してから60か月後に、両案の家賃収入の合計が並びます。

6万円×62か月=372万円/6万2,000円×60か月=372万円

並ぶまでの期間は、「入居が遅れた月数×相場の家賃÷月の上乗せ額」で求められます。

入居の遅れ遅れた分の家賃高い家賃での入居から並ぶまで並ぶ時点の合計
1か月6万円30か月186万円
2か月12万円60か月372万円
3か月18万円90か月558万円

並ぶ前に入居者が退去すれば、高い家賃の案は合計で追いつかないまま、次の空室期間に入ります。

なお、これは経費を除いた家賃収入の比較で、ローン返済後の手残りの損益分岐とは異なります。手残りは、管理手数料や原状回復費など、案によって変わる支出を差し引いて確かめます。年間家賃と空室率を変えた収支は収益物件かんたん収支シミュレーションでざっと試算できます(管理費や修繕費は別に見込む必要があります)。

家賃相場を調べる手順

家賃相場は、条件をそろえた成約事例で確かめるのが基本です。条件の違う事例と比べると、相場を高くも低くも見誤るためです。

成約事例は条件をそろえて比べる

管理会社や地元の仲介会社に、周辺で決まった部屋の家賃を聞くときは、次の条件をそろえて比べます。

そろえる条件理由
成約時期古い事例は、今の相場とずれている可能性がある
立地同じ市内でも、道路や生活施設への近さで需要が変わることがある
面積・間取り・築年数広さや古さで家賃の水準が変わる
設備設備の有無で、比べられ方が変わる
駐車場・共益費家賃に含まれるかどうかで総額が変わる。車移動が中心の地域では、駐車場の条件で比べられることもある
フリーレントなどの条件家賃が同じでも、入居時の条件で実際の負担が変わる

成約事例が少ないときは、募集中の競合と反響を併用する

地方では、条件の近い成約事例が少ないこともあります。その場合は、次の情報を組み合わせて判断します。

  • 募集中の競合物件の家賃・総額と、掲載が続いている期間
  • 自分の物件の問い合わせ数と内見数
  • 条件を変えたあとの反響の変化

長く掲載が続いている競合は、条件が相場に合っていない可能性があります。その家賃をそのまま基準にしないよう注意します。

値下げの前に、空室の原因を切り分ける

家賃を下げる前に、空室の原因が家賃にあるのかを確認します。原因が別にあると、値下げしても決まらず、家賃収入だけが減るためです。募集の段階ごとに見ると、切り分けやすくなります。

状況考えられる原因確認すること
問い合わせが少ない家賃・総額が相場より高い、掲載写真や情報が少ない総額での比較、掲載内容
内見が少ない写真や間取り図の印象、立地や駐車場の条件掲載情報、駐車場の条件
内見はあるが申込みにならない家賃と物件条件の釣り合い、室内・設備・共用部の状態内見者の見送り理由

内見があっても、「この家賃ならほかの部屋にする」という判断で見送られている場合は、家賃と物件条件の釣り合いが原因です。管理会社や仲介会社に見送り理由を確認し、家賃の問題か、室内や設備の問題かを切り分けます。原因ごとの対策は地方物件の空室はなぜ起きる?管理会社が見ている原因と対策で解説しています。

家賃以外に見直せる募集条件

値下げは、入居が続く限り収入が減る方法です。月々の家賃を保ったまま見直せる条件もあるため、費用と効果を比べてから決めます。

見直す条件向いている状況確認すること
初期費用(敷金・礼金など)家賃は相場並みだが、入居時の負担が周辺より重い退去時の精算を含めた条件
フリーレント(入居後の一定期間、家賃を無料にする)月々の家賃は保ちたいが、決め手が足りない無料期間の条件や、短期で解約された場合の扱いを、契約書の記載で管理会社と確認する
設備の追加・交換競合と比べて設備が見劣りする費用を何か月で取り戻せるかの試算
掲載写真・情報問い合わせ自体が少ない実物と違う印象を与えないか
駐車場の条件総額で比べると割高に見えている台数・料金を変えたときの収支全体への影響

家賃を下げるときに確認したいこと

既存の入居者との家賃の差

契約中の入居者の家賃は、それぞれの賃貸借契約で決まっています。募集家賃を変えても、それだけで既存の契約が変わるわけではありません。ただし、家賃に差が出ると、既存の入居者から減額の相談を受ける可能性があります。対応の方針は、管理会社と事前に話し合っておきます。

ローン返済後の手残り

値下げ後の家賃で、ローン返済と管理費・修繕費などの支出を続けられるかを試算しておきます。

売却するときの評価

収益物件の売却では、買主が現在の家賃収入をもとに利回りや価格を検討することがあります。値下げは売却時の評価に影響する可能性があり、空室が多い状態も買主の判断材料になります。売却の予定がある場合は、時期も含めて管理会社や売買の担当者に相談しておきます。

管理会社に家賃の見直しを相談するときの確認事項

家賃の見直しは、管理会社の提案を聞いたうえで、最終的にはオーナーが判断します。提案を受けたときは、次の点を確認すると根拠を比べやすくなります。

  • 募集開始からの問い合わせ数・内見数と、見送り理由
  • 条件をそろえた周辺の成約事例と、決まるまでの期間
  • 競合になっている物件と、その条件
  • 提案している家賃や条件の根拠
  • 次に条件を見直す時期と、その判断基準

相場は、競合物件の増減や時期によって変わります。空室が出るたびに、その時点の相場と反響で見直すことが、家賃を決めっぱなしにしないための基本です。管理会社への相談や報告の受け方は収益物件の管理会社との付き合い方で解説しています。

これから購入する人へ(補足)

購入前の段階では、販売資料の家賃が相場と合っているかを収益物件の家賃は相場と合っている?高すぎる・安すぎる理由と購入前の確認方法で、家賃が下がった場合の収支を不動産投資のストレステストで確かめておくと、購入後の見直しに備えられます。

よくある質問

空室が続くとき、家賃はどのくらい下げればいいですか?

一律の下げ幅はありません。条件をそろえた成約事例と、競合物件の条件を基準に決めます。下げ幅を決める前に、問い合わせ数・内見数・見送り理由から、原因が家賃にあるかを確認しておきましょう。

家賃を見直すタイミングに目安はありますか?

全国共通の決まった期間はありません。エリアや時期によって動きが変わるため、募集を始める前に「どのくらい反響がなければ見直すか」を管理会社と決めておくと、判断しやすくなります。

フリーレントと値下げは、どちらがよいですか?

物件と周辺の状況によって異なります。フリーレントは月々の家賃を保てる一方、無料期間の家賃収入は入りません。契約上の条件も含めて、管理会社と収支を比べて判断しましょう。

購入時のシミュレーションより家賃が下がったらどうすればいいですか?

まずは条件をそろえた成約事例で、今の相場を確認しましょう。そのうえで、家賃を調整した場合と空室が続いた場合の収支を、ローン返済後の手残りで比べると判断しやすくなります。

まとめ

空室が続くときの家賃は、「理想の家賃」ではなく、周辺で実際に決まった家賃を基準に見直します。

  • 相場は、条件をそろえた成約事例と毎月の支払い総額で確かめる。事例が少なければ、競合と反響を併用する
  • 上乗せと入居の遅れは、仮定を明らかにしたうえで家賃収入の合計で比べ、手残りは別に確かめる
  • 値下げの前に、問い合わせ・内見・見送り理由から原因を切り分け、家賃以外の条件とも比べる
  • 値下げするときは、既存の入居者・手残り・売却時の評価への影響も確認する

まずは管理会社に、問い合わせ数・内見数・見送り理由と、条件をそろえた周辺の成約事例を確認するところから始めてみましょう。

賃貸アパートと成約事例の比較資料を背景に、空室時の家賃の見直し方と値下げ前の確認点を紹介する画像。

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この記事を書いた人

ときどのアバター ときど 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人資産相談業務)/相続支援コンサルタント

不動産業界12年目。現在も北関東の不動産会社に勤務し、賃貸管理・収益物件の売買・査定・現地確認などの実務に携わっています。栃木・群馬・茨城の収益物件について、空室・修繕・融資・売却まで、利回りだけでは分からない点を現場目線で解説しています。

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