不動産投資のストレステスト|空室・家賃下落・修繕・金利上昇の試算例

賃貸アパートと収支資料を背景に、空室・家賃下落・修繕・金利上昇のストレステストを紹介する画像。

収益物件を検討していると、販売図面の利回りや収支表の数字を見て「これなら大丈夫そう」と感じることがあります。ただ、その数字が満室を前提にしているのか、今の家賃がこの先も続く前提なのかは、資料によって異なります。では、空室が長引いたら、家賃を下げたら、修繕が重なったら、金利が上がったら、手元にお金は残るのでしょうか。

結論から言うと、購入前に「空室・家賃下落・修繕・金利上昇」の4つを数字で試算し、悪いことが重なった年でも、手元資金で返済と支払いを続けられるかを確かめておくことが大切です。この試算を、この記事では「ストレステスト」と呼びます。

この記事では、仮のモデル物件を使って、4つのケースの試算例を順番に示します。あわせて、悪い条件が重なったときの計算、年間では黒字でも資金が足りなくなるタイミング、損益分岐点の稼働率、地方・北関東の物件で厳しめに見たいポイント、試算結果の判断の仕方までまとめます。

目次

不動産投資のストレステストとは?悪い条件で収支を試算すること

不動産投資のストレステストとは、空室や家賃下落などの悪い条件を収支計算にあえて入れて、それでも返済と支払いを続けられるかを確かめる試算です。目的は未来を当てることではなく、「どこまで悪くなったら手元のお金が減り始めるのか」という限界を、購入前に知っておくことにあります。

収益物件の運用では、退去の時期、周辺の競合物件、設備の故障、金利の動きなど、購入時には読み切れないことが起こります。ストレステストは、そうした「悪い年」を数字で先に確かめておくための作業です。

進め方は、次の3段階です。

  1. 基準の収支を出す:家賃収入から経費とローン返済を引いた、年間の手残りを計算する
  2. 悪い条件を1つずつ入れる:空室・家賃下落・修繕・金利上昇を、それぞれ単独で試算する
  3. 悪い条件を重ねる:2つ以上が同じ年に起きた場合を試算し、手元資金で耐えられるかを見る

なお、資料の利回りがどの前提の数字なのか(満室想定か、現況か、経費を引いた実質か)があいまいなままだと、基準の収支そのものがずれます。利回りの種類と計算方法は、「利回りだけで選ぶ」は失敗のもと|満室想定・現況・実質利回りの違いと計算例で確認しておくと、この先の試算が進めやすくなります。

ストレステストで想定したい4つのケース

想定しておきたいのは、空室の長期化、家賃の下落、修繕の集中、金利の上昇の4つです。いずれも収益物件を持てば起こりうることで、起きたときに収支のどこが減るのかが異なります。

ケース何が起きるか収支への影響試算の置き方
空室の長期化退去後、次の入居者が決まるまで時間がかかるその期間の家賃収入がなくなる何室が何か月空くかを置く
家賃の下落競合物件の増加や築年数の経過で、募集家賃を下げる下げた家賃の部屋は、毎月の収入が減り続ける直近の成約家賃を基準に下げ幅を置く
修繕の集中設備の故障や外装の工事が同じ時期に重なるその年に大きな支出が出るその年の修繕額をまとめて置く
金利の上昇変動金利で借りている場合、返済額が増えることがある返済額が増えている間、手残りが減る返済額の増加分を置く(金利の上昇幅とは別に考える)

4つのケースは、支出の表れ方が違います。修繕は工事のたびにまとまった支出として表れやすく、建物を持ち続ける限り、時期を変えて繰り返し発生します。家賃の下落と返済額の増加は、条件が戻らない限り毎年の収支に効き続けます。この違いを意識すると、どのリスクに備えるべきかが見えやすくなります。

モデル物件で試算してみる

ここからは、計算の流れを見るための仮の数字で試算します。実在の物件や相場をもとにした数字ではありません。実際の検討では、検討中の物件の資料と金融機関の条件に置き換えてください。

項目仮の数字
物件一棟アパート・6戸(全戸同じ家賃)
家賃1戸あたり月5万円(満室で年360万円)
経費年72万円(管理手数料・固定資産税・保険料・共用部の電気代など)
ローン返済年180万円(元金と利息の合計)
年間の手残り(基準)360万円−72万円−180万円=108万円

この「満室で年108万円残る」状態が、試算の基準です。計算を読み進める前に、前提を確認しておきます。

  • 経費72万円は、どのケースでも同じ額に固定しています。ケース同士を比べやすくするための仮定です。実際には、家賃に比例する管理手数料のように、収入が減ると少し下がる経費もあります。
  • この記事の「手残り」は、会計上の利益ではなく、お金の出入り(資金収支)です。家賃収入から、固定資産税を含む経費とローン返済(元金と利息)を引いた金額で、所得税・住民税などの税金を差し引く前の額です。会計上の利益は、元金の返済を経費に含めず、減価償却費を差し引くなど計算の仕方が違うため、手残りとは一致しません。
  • 修繕のケースで使う100万円は、経費72万円に含めていない追加の支出として扱います。

① 空室が長引いた場合

6戸のうち2戸が6か月ずつ空いたとすると、減る家賃は5万円×2戸×6か月=60万円です。年間の手残りは108万円から48万円に下がります。半分以下になりますが、この試算ではまだマイナスにはなりません。

空室による減収の期間は、前の入居者の家賃が発生しなくなった日から、次の入居者の家賃が発生し始める日までと考えると正確です。退去の立ち会い、原状回復工事、募集、申し込みと審査、契約という流れのうち、どこまでが家賃の入らない期間に当たるかは、解約の予告期間や入居日の決め方、フリーレント(入居後一定期間の家賃を無料にする条件)の有無で変わります。管理の現場では、原状回復工事に時間がかかって募集の開始が遅れたり、入居を決めるための広告料が同じ時期に出ていったりすることもあります。空室の試算では、家賃が止まる期間を短く見積もりすぎないことが大切です。

過去にどれくらい空室が続いたかは、現時点の入居状況をまとめたレントロール(入居者ごとの家賃・入居時期をまとめた一覧)だけでは分からないことがあります。入退去の履歴や、管理会社の募集・成約の記録もあわせて確認できるか、売主側に尋ねてみてください。

② 家賃が下がった場合

全6戸の家賃を年初から月5,000円ずつ下げたと仮定すると、減収は0.5万円×6戸×12か月=36万円です。年間の手残りは108万円から72万円になります。金額は空室ほど大きくありませんが、一度下げた家賃は戻しにくく、この減収は翌年以降も続く可能性があります。なお、ここでは計算を簡単にするために全戸同時に下げていますが、実際の家賃の下落は退去と再募集のたびに起きることが多く、部屋ごとに時期が異なります。

購入前の確認で見たいのが、レントロールの入居時期と家賃の並びです。長く住んでいる入居者は、入居した当時の家賃のままになっていることがあります。その部屋が退去すると、次の募集は今の相場の家賃になるため、相場が下がっていれば収入も下がります。試算は「現在の家賃」ではなく、直近に入居が決まった部屋の家賃や、周辺の募集家賃を基準にすると現実に近づきます。周辺相場との比べ方は、収益物件の家賃は相場と合っている?高すぎる・安すぎる理由と購入前の確認方法で詳しく解説しています。

③ 修繕が重なった場合

ある年に、設備の交換や外装の補修などで、経費とは別に合計100万円の修繕が発生したとします。その年の手残りは108万円から8万円に減ります。マイナスにはならなくても、ほかの悪い条件が同じ年に重なると、すぐに持ち出しに変わる水準です。

修繕の時期は、資料と現地である程度の見当をつけられます。修繕履歴で、いつ・どこを直したかを確認し、現地では給湯器やエアコンなどの設備の製造年を見ます。製造年は本体のラベルで確認できることが多く、交換時期を考える目安の一つになります。ただし、実際の傷み具合は使い方や点検・メンテナンスの状況で変わるため、製造年だけで交換時期は決まりません。点検の記録や管理会社の見立てとあわせて判断してください。外壁や屋上防水のような大きな工事は金額の幅が大きいため、必要に応じて見積もりを取って確かめます。修繕費の考え方は、収益物件の修繕費、どう向き合う?先送りしないための考え方で整理しています。

④ 金利が上がった場合

変動金利で借りている場合、金利が上がると返済額が増えることがあります。ここでは、年間の返済額が18万円(基準の返済額の10%)増えた場合を置いてみます。手残りは108万円から90万円になります。

この18万円は、金利が何%上がった結果なのかを計算した数字ではありません。返済の負担が年18万円増えたら収支がどう変わるかを見るための、仮の置き方(感度分析)です。金利の上昇幅(たとえば0.5パーセントポイント。例:年2.0%→年2.5%)と、返済額の増加率(10%)は別のもので、金利が同じだけ上がっても、返済額がどれだけ増えるかは借入残高・残りの返済期間・返済方法によって変わります。また、変動金利の返済額をいつ、どのように見直すかのルールは、金融機関や商品によって異なります。

購入前には、借入予定の金融機関に、金利が上がった場合の返済額と、返済額の見直しのルールを確認しておきましょう。複数の金利で返済額を出してもらい、どの金利で手残りがなくなるかを知っておくと判断しやすくなります。金利タイプの選び方や融資の進め方は、収益不動産を始めるためのステップ3:融資先の検討と事前審査で解説しています。

悪い条件が重なると、手残りはどうなるか

1つずつなら耐えられても、2つ以上が同じ年に重なると、手残りは一気にマイナスへ近づきます。ストレステストで確かめたいのは、この「重なったとき」です。

モデル物件で、空室(2戸が6か月)と家賃下落(月5,000円)が同じ年に起きたとします。家賃を下げた影響は入居している部屋の分だけ(6戸×12か月−空室12か月=60か月分)なので、減収は60万円+30万円=90万円です。手残りは18万円まで下がります。さらに同じ年に100万円の修繕が出れば82万円の持ち出し、返済額も年18万円増えていれば100万円の持ち出しになります。

試算のパターン計算(万円)年間の手残り
基準(満室・追加修繕なし)360−72−180108万円
①空室のみ108−6048万円
②家賃下落のみ108−3672万円
③修繕のみ108−1008万円
④返済額の増加のみ108−1890万円
①空室+②家賃下落108−60−3018万円
①空室+②家賃下落+③修繕18−100−82万円
①〜④の4つすべて−82−18−100万円

空室と修繕が同じ時期に重なることは、珍しいことではありません。退去をきっかけに原状回復や設備の交換が必要になると、家賃が止まっている間に支出が出ていくためです。どの組み合わせが起きやすいかは物件の状態や時期で変わるので、検討中の物件で起こりそうな組み合わせを選んで試算してください。

年間で黒字でも、資金が足りなくなる時期がある

年間の手残りがプラスでも、支払いの時期によっては、一時的に手元のお金が足りなくなることがあります。家賃は毎月少しずつ入ってきますが、修繕代は工事のときにまとめて支払うことが多いからです。

たとえば「③修繕のみ」の年は、年間では8万円のプラスです。しかし、100万円の修繕代を年の初めに支払う場合、その年の家賃から生まれる手残りはまだほとんど積み上がっていません。前の年までに残しておいたお金がなければ、支払いに足りなくなります。固定資産税のように年に数回まとめて払う支出も同じです。年間の合計だけでなく、大きな支払いが来る月に、口座にいくらあるかも確認しておきましょう。

損益分岐点の稼働率を出しておく

悪い条件の組み合わせをすべて試すのが大変なときは、「損益分岐点の稼働率」を出しておくと便利です。ここでいう損益分岐点の稼働率とは、経費とローン返済を家賃収入でちょうど払える稼働率のことで、(経費+年間返済額)÷満室時の年間家賃収入で計算します。

モデル物件では(72万円+180万円)÷360万円=70%です。家賃収入が満室時の70%を下回ると、経費と返済を家賃だけでは払えず、持ち出しが始まります。返済が年18万円増えると(72万円+198万円)÷360万円=75%、家賃を月5,000円下げると(72万円+180万円)÷324万円=約78%に上がります。この数字が高いほど、少しの空室で持ち出しに近づく物件です。

読むときの注意点が2つあります。1つ目は、この70%は家賃収入ベースの稼働率だということです。モデル物件は全戸同じ家賃なので、戸数で見ても同じ割合になります。6戸×12か月=72戸月に対し、賃料が発生する期間の合計が50.4戸月となる計算です。これは年間平均の稼働率で、ある時点の入居戸数とは異なります。部屋ごとに家賃が違う物件では、戸数ベースの稼働率と家賃収入ベースの稼働率は一致しません。また、フリーレントの期間のように、入居していても賃料が発生しない期間があるため、入居している期間と賃料が発生する期間は一致しないことがあります。2つ目は、経費を固定し、家賃は一定、追加の修繕なしという前提で出した、簡易的な資金収支の分岐点だということです。会計上の損益分岐点とは計算の仕方が違います。

サイト内のシミュレーションで条件を変えてみる

検討中の物件の数字で試すときは、サイト内の2つのツールが使えます。ツールごとに変えられる条件が違うので、目的に合わせて使い分けてください。

  • 収益物件 かんたん収支シミュレーション:物件価格・満室時の年間家賃・自己資金・金利・返済期間・空室率を入力し、表面利回りと返済額、簡易的な収支を確認できます。空室率や金利を変えて、収支がどう動くかをざっと見るのに向いています。管理費・修繕費・税金は含まれていません。
  • 【本格版】収益不動産35年収支シミュレーション:空室率・年あたりの家賃下落率・管理費率・固定資産税・年あたりの修繕費・金利などを入力し、35年間の年次収支や損益分岐点比率(BER)を確認できます。修繕費は毎年同じ額として計上する仕組みのため、特定の年にまとめて出る修繕の影響は、この記事の③のように別に試算してください。

地方・北関東の物件で厳しめに見たいポイント

北関東(栃木・群馬・茨城)のような地方の物件では、都市部と同じ感覚で試算すると、空室と家賃下落を甘く見積もりやすくなります。エリアの需要の特徴を踏まえて、試算の条件を決めることが大切です。

  • 駐車場の台数:車社会の地方では、駐車場が足りない物件は入居者に選ばれにくく、空室が長引く原因になりやすいです。台数の不足は後から解消しにくいため、空室の試算を厳しめに置く理由になります。台数の考え方は収益物件の駐車場は何台必要?地方・北関東で確認したい台数の目安と見極め方で解説しています。
  • 募集の時期:賃貸の動きは春の転勤・進学の時期に集中する傾向があります。その時期を外して退去が出ると、次の入居が決まるまで長くかかることがあります。
  • 同じ市内でも需要差が大きい:駅や工業団地、幹線道路との位置関係で、同じ市内でも決まりやすさが変わります。市全体の数字ではなく、物件の周辺で同じような部屋がどれくらい募集に出ているかを確認してください。調べ方は不動産投資の市場調査のやり方|エリアの需要・家賃相場・空室を調べる5つの手順で解説しています。
  • 新築物件との競合:周辺に新しいアパートが建つと、築年数の古い物件は家賃を下げて対抗せざるを得ないことがあります。周辺で建築中の物件がないかは、現地を回って確かめたい点です。

もう一つ意識したいのが出口です。地方の収益物件は、都市部に比べて買い手の数が限られる傾向があります。「収支が厳しくなったら売ればいい」と考えていても、思った時期・価格で売れない可能性があります。だからこそ、売却に頼らず、持ち続ける前提で耐えられるかを購入前の試算で確かめておくことが重要です。空室の原因と対策は地方物件の空室はなぜ起きる?管理会社が見ている原因と対策で詳しくまとめています。

ストレステストの結果をどう判断するか

判断の基準は、「悪い条件が重なった年が来ても、その状態が続く間、手元資金で持ち出しを補いながら返済を続けられるか」です。1年分の赤字を補えるかだけでなく、赤字やぎりぎりの状態が何年続きうるかと、購入後にいくら手元に残るかをあわせて確認します。

モデル物件でいえば、空室と家賃下落が重なった状態は、家賃を戻すか満室にするまで続く可能性があります。同じ年間空室量と家賃水準が翌年も続くと仮定すれば、手残りは年18万円です。そこに修繕の年が来れば82万円の持ち出しになります。この状態が数年続くことを想定するなら、それに見合う手元資金が必要になります。

試算の結果考え方
悪い条件が重なっても手残りが残る今回の想定条件では資金収支がプラス。立地・建物・融資・出口などほかの確認項目もあわせて検討する
重なるとマイナスになるが、想定する期間の持ち出しを手元資金で補える条件付きで検討できる。購入後に残す資金を、頭金や諸費用に使い切らない
1つの悪い条件でマイナスになる/想定する期間の持ち出しを補えない価格交渉・借入条件の見直し・見送りを検討する段階

収支表の数字が良くても、購入後の手元資金は別に確認する必要があります。自己資金を頭金に入れすぎて、購入後の修繕や空室に備えるお金が残らないと、ストレステストで想定した「悪い年」に対応できません。試算と同時に、購入後に手元に残すお金の額も決めておきましょう。

購入前に確認しておきたいことは、次のとおりです。

  • レントロールで、入居者ごとの家賃・入居時期を確認する
  • 入退去の履歴や管理会社の記録で、過去の空室期間を確認する
  • 周辺の募集家賃と、直近に決まった部屋の家賃を比べる
  • 修繕履歴・点検の記録と、主な設備の製造年を確認する
  • 金融機関に、金利が上がった場合の返済額と、返済額の見直しのルールを確認する
  • 損益分岐点の稼働率を計算する
  • 悪い状態が続く期間を想定し、購入後に手元に残す資金の額を決める

試算しても「何となく不安が消えない」ときは、その不安の理由を言葉にしてみることも大切です。見送りの判断の考え方は不動産投資は「少し不安がある」で止める勇気も必要|5つの判断基準まとめで整理しています。

よくある質問

Q. ストレステストでは、空室を何か月で見ればいいですか?

決まった正解はなく、物件とエリアの状況で決めるのが基本です。入退去の履歴や管理会社の記録で過去の空室期間を確認し、周辺で同じような部屋がどれくらい募集に出ているかも見たうえで、それより厳しめに置きます。数字を1つに決められないときは、「1室が数か月空く」「複数室が半年空く」のように、複数のパターンで試算すると判断しやすくなります。

Q. 金利は何%上がる想定で試算すればいいですか?

一律の目安はないため、借入予定の金融機関に返済額の試算を依頼するのがいちばんの近道です。今の金利のほかに、何段階か高い金利でも返済額を出してもらい、どの金利で手残りがなくなるかを確認しておきます。金利の動向や返済額の見直しのルールは時期・商品によって変わるので、最新の条件は金融機関で確認してください。

Q. 最悪のケースを想定しすぎると、物件を買えなくなりませんか?

すべての物件に完璧な安全性を求める必要はありません。ストレステストの目的は、悪い年が来たときに手元資金で乗り切れるかを確かめることです。耐えられる範囲が分かったうえで購入する、という結論になることも十分にあります。

Q. 4つのケースがすべて同時に起きる前提で考えるべきですか?

どのケースが同じ年に重なるかは、物件の状態や時期によって変わります。まずは、空室と修繕、空室と家賃下落のように、検討中の物件で重なりやすい組み合わせを試算してください。そのうえで4つすべてを重ねた場合も一度計算しておくと、今回置いた厳しい条件で、どれだけの持ち出しが出るかを把握できます。ただし、4つを重ねた結果(モデル物件では−100万円)は、置いた条件での試算であり、損失の上限ではありません。

Q. 業者が出す収支シミュレーションだけでは足りませんか?

業者の収支表がどんな前提で作られているかは、資料によって異なります。空室率・家賃・経費・金利・修繕費の前提を確認し、満室や現在の家賃を前提にしている場合は、自分で条件を厳しくして試算し直すことをおすすめします。

まとめ

不動産投資のストレステストは、空室・家賃下落・修繕・金利上昇の4つを収支に入れて、悪いことが重なった年でも返済と支払いを続けられるかを、購入前に確かめる試算です。

  • まず基準の手残りを出し、悪い条件を1つずつ、次に重ねて試算する
  • 手残りは会計上の利益ではなく、所得税・住民税などを差し引く前のお金の出入りとして見る
  • 金利のケースは、金利の上昇幅と返済額の増え方を分けて考え、返済額は金融機関で確認する
  • 年間で黒字でも、大きな支払いの時期に資金が足りなくなることがある
  • 損益分岐点の稼働率は、前提つきの簡易的な目安として使う
  • 判断の基準は「悪い状態が続く間、手元資金で補えるか」。購入後に残すお金も先に決めておく

次の一歩として、検討中の物件の資料をもとに、まずは基準の手残りと損益分岐点の稼働率を計算してみてください。リスクをゼロにすることはできませんが、事前に数字で確かめておくことで、慌てずに対応できる範囲を広げることはできます。

この記事は、不動産業界12年目の運営者が、賃貸・不動産管理・収益不動産の売買などの実務経験をもとに執筆しています。

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この記事を書いた人

ときどのアバター ときど 宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人資産相談業務)/相続支援コンサルタント

不動産業界12年目。現在も北関東の不動産会社に勤務し、賃貸管理・収益物件の売買・査定・現地確認などの実務に携わっています。栃木・群馬・茨城の収益物件について、空室・修繕・融資・売却まで、利回りだけでは分からない点を現場目線で解説しています。

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